2E教育を学ぶ

発達障害のある子どもの才能を活かす2E教育

2E教育の理念

2E教育は、アメリカの学校で1980年代に始まり、全米各地で実践が広がってきた。2E教育が実施される背景には、アメリカの学校教育では障害児教育と並んで「才能教育」(gifted education)が「特別教育」の一環として制度化されている状況がある。才能のある生徒も特別な教育ニーズをもつからである。才能教育では、国や州の教育法に基づいて、生徒の多彩な才能を判別して伸ばすために、多様な指導・学習方法が用いられ、教育措置が講じられる。才能教育の理念および方法は、二つに大きく分けられる。(以下の分類は松村による。)

①狭義の才能教育:各領域の著しく優れた才能を育成するために、各々少数(数%以下など)の生徒を特別プログラムや飛び級・飛び入学等の例外措置のために選抜する。

②広義の才能教育:通常学級をベースに、すべての生徒の学習ニーズに応じて、得意・興味を伸ばして活かすように学習を個性化する。

2E教育においても、才能教育と同様に、大きく二つの理念および方法に分けられる。

① 狭義の2E教育:並外れた才能を併せもつ一部の発達障害生徒について、知能や学力、創造性等の才能を、才能教育で用いられる方法で識別して、障害と才能両方に対応する特別プログラムを提供する。

②広義の2E教育:すべての発達障害(傾向・未診断も含む)生徒の(才能を識別しないで)得意・興味(才能)を伸ばし、活かして苦手(障害)を補う理念の下に、学習内容・方法を個性化する。

発達障害のある子どもの才能の識別方法

アメリカ等では2E児の才能の識別方法として、狭義の2E教育プログラムでは、発達障害児の中から、検査や教師のふだんの観察などで、多様な観点から才能を示す生徒を識別する。

広義の2E教育でも、才能(得意・興味)の識別方法は同様である。発達障害の同じ診断名でも、学習上の障害や才能の表れ方は個人によって異なるので、個人の学習ニーズに細やかに対処するためには、得意や興味、苦手など多様な特性を異なる観点から吟味する必要がある。このために、認知発達の多面的な特性を総合的プロフィールとして捉える「認知的個性」(CI)の概念が有用である。

才能を活かす学習方法

2E教育(狭義、広義共に)の指導・学習方法として、個人ごとの障害と才能の特性に応じて学習内容・方法を個別化・個性化するという、通常の代替の工夫がなされる。

わが国でも、2E教育を標榜しなくても、すでに特別支援教育で行われている実践のいくつかは、広義の2E教育の方法と重なる。通級指導教室等で個別指導を行うとき、また通常学級のユニバーサルデザインの授業等ですべての生徒への指導・学習方法を工夫するとき、発達障害生徒の得意(良いところ)を活かそうとしているからである。

また、大学で発達障害(傾向含める)学生を広義の2E者と捉え直し、広義の2E教育の理念に基づく修学支援を提供することも有意義である。小学校から大学まで継続的に、障害に対する「合理的配慮」の支援だけでなく、積極的に才能を伸ばし活かす学習支援を提供することによって、広義の2E児・者の自己効力感や、社会で生きる力を養えると期待される。

いっぽう、わが国では狭義の2E生徒への対応は現状では不十分なため、狭義の2E教育についても今後特別支援の場を創設していく必要がある。

アメリカ等では、発達障害生徒に特化した小規模の私立学校で、大学進学を支援したりして才能を活かす取り組みが増えてきた。日本でも私立学校や学習塾等で類似の工夫はある程度可能だろう。しかし私立の少人数教育では学費が高額になり、アクセスが家庭の経済力に左右される等の問題がある。公立学校を中心に多様な機会を設け、2E生徒への適切な学習および社会・情緒的支援を行うような体制整備が望まれる。

(©松村暢隆,2015)

『2E教育の理解と実践』まえがき より抜粋

一人の子どもに才能と発達障害が同居することは、以前は常識ではなく、今でも学校で の特別支援教育での実践は、事実上才能は無視して障害への対応で精一杯になる。2E児を もつ親が子どもの才能に気づき、例えば「もっと難しい内容を学習できたら子どもは学校 が好きになるのに」と思っても、学校では十分に対応できないことも多い。教師も、2E児 に適切に応じる「2E教育」とはどのようなものか、どうすればいいのかがよく分からない 。

そのため、2Eや2E教育という言葉はようやく注目され始めたものの、その理念・方法に ついて共通認識がなく、認識がずれてしまう。日本では2E教育の基盤となる「才能教育」 が存在しないため、実際の才能教育の様子はよく知られず、才能や才能児に関する共通理 解がないことも混乱に輪をかけている。2Eの子どもは、とくに親たちの間で最近しばしば 「ギフテッド」と呼ばれることがある。 [中略] そのために障害面への適切な対応の 機会を逃してしまっては残念である。逆に、発達障害と診断されたり「発達障害っぽい」 と片づけられるが、本当は才能に伴って発達障害とは別の問題が表われているという場合 も少数だがあり得る。いずれの場合も、障害を診断する者は2E児や才能児の特性について 理解しておくべきである。しかし日本ではほとんど全く、2E教育の先進国アメリカでさえ 多くの場合、それらは考慮されない。2E児や才能児の障害や困難の面だけが注目され、才 能を正当に評価して伸ばしてくれる教育制度が存在しないのは、そういう子どもたちにと って不幸である。

★本書の第1章・第2章の詳述と引用文献は、こちらをご覧下さい。

★2E教育について、より詳しく知りたい方は、こちら[1] [2] [3]をご覧下さい