『才能教育・2E教育概論』の紹介

才能教育・2E教育概論-ギフテッドの発達多様性を活かす-
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才能教育・2E教育概論-ギフテッドの発達多様性を活かす-

著者 松村暢隆
出版社 東信堂
刊行日 2021/07/10
判型・定価 A5判・360ページ 本体3,600円+税

2E教育とその背景をなす才能教育について、心理学・教育学的観点から包括的に詳しく論じた、わが国で唯一の概論書です。2E教育・才能教育の理論・概念と実践について、アメリカだけでなく日本での具体的な実践例も盛り込み、最近・今後の日本の才能教育と2E教育に忖度なしの提言を述べています。

内容構成

1章 才能の概念と発達多様性
 才能に関する用語/才能の定義/多様な知能の理論/創造性の概念/発達多様性に応じる才能教育/社会的多様性に公正な才能教育
2章 才能児の多様な才能とニーズの評価
 多様な才能識別のモデル/才能行動の評価方法/知能・学力・創造性の評価/良く生きる知能、思考スタイルとMIの評価/社会的多様性のある才能児のニーズの評価/才能児の社会情緒的支援
3章 才能教育の方法と早修
 アメリカの才能教育の時代的変化/才能教育の種類と早修/早修の多様な措置/早期カレッジ高校/州立科学高校
4章 拡充プログラム
 全校拡充モデル(SEM)/指導の個別化/MI実践/課外拡充プログラム/G/Tプログラムの基準と評価
5章 2Eの概念と2E教育の方策
 2Eの概念/2E教育の方法/2Eのアセスメント/才能伸長と学習支援の多層支援システム(MTSS)/2Eと才能児の社会情緒的問題
6章 2E教育の実践方法
 2E教育の多様なプログラム/公立学校の2Eプログラム:モンゴメリー郡公立学校/公立中等学校の2E通級指導教室:GOLDプログラム/2Eにも応じる発達障害対象の小規模な私立学校/2E生徒を包括的に支援する私立学校:ブリッジズ・アカデミー/発達障害学生への学習支援:アリゾナ大学SALTセンター
第7章 日本の才能教育の現状と課題
 才能教育の経緯と議論/大学早期入学(飛び入学)/全ての生徒の個性を活かす指導・学習/文部科学省指定・認定高校の拡充プログラム/才能を伸ばすための学校外のプログラム
8章 日本の2E教育の現状と課題
 2E教育の認識の必要性/広義の2E教育:得意・興味を活かす/狭義の2E教育:学校で2E生徒の才能を活かす/才能児・2E児の学校不適応とオルタナティブ教育/2E教育の理念での発達障害高校生・大学生への支援/不協和感のある才能児者(GDF)の社会情緒的問題

本書「まえがき」より抜粋

最近は一般に「ギフテッド」の誤解が散見される。曰く、「ギフテッドはIQが高い人だ」「発達障害で才能のある人をギフテッドと呼ぶ」「ギフテッドとは天才のことで、アメリカでは天才教育が行われている。」本編で述べるように私は専門用語として「ギフテッド」は用いず、「才能児(者)」と表す。それでもサブタイトルに敢えて「ギフテッド」と入れたのは、発達障害や才能の観点からその言葉に注目される方々に、まずその概念と教育の実情を正しく認識して頂いて、議論の際の食い違いを防ぐためにも、本書は必読文献だという宣言を込めている。

サブタイトルの「発達多様性」(発達ダイバーシティ)については本編で述べるが、才能児か「一般の」子どもか、発達障害か定型発達か等、人にラベルを付けて二分する見方は好ましくない。また才能や発達障害は平均的な発達からズレている(発達の凸凹)のではなく、人それぞれの多様な発達の道筋の中で、たまたま現在までの環境で表れる特性として捉え直そう、という提言を込めている。

本書「あとがき」より抜粋

近年日本でも才能教育に該当するプログラムが、さまざまに取り組まれるようになった。それらは特に理系の、あるいはグローバルな優れた人材の発掘・育成の視点に立つものが主になる。しかし、今後の日本の才能教育は、通常学級で困っている才能児の学習・社会情緒的ニーズを汲み取るという視点から考えるべきである。そして、2EやGDFなど発達多様性のある才能児に対して、周囲がその困り感を認識して、現在の環境にうまく適応するのを支援したり、より適合する環境を整えたりすべきだろう。

2021年1月の中教審答申で、「令和の日本型学校教育」として、「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現が謳われた。教師が視点を変えれば気づける、あるいはどうしても気づけない隠れた問題を抱える才能児も、取り残されたくない。学校内外で、多様な学び場が縦横に連携されて、全ての子どもが各々最適な居場所で才能特性を活かす学習活動が展開され、その中で稀有な、特異な才能も公正に救い出される体制整備が望まれる。

* 「障害」の表記について

本書では、…「発達障害」のように法律名や制度名、障害名や診断名を表記する場合、「障害」と表記して、一般的な総称の場合のみ「障碍」と表記する。「碍」は「障」と同様に「差し障り」の意味で、戦前には一般に「障碍(礙)」(しょうがい・しょうぎ)とも表記されたが、戦後、当用漢字から削除され未だ復活していないのである。…教育・福祉行政でよく用いられる「障がい」の表記は、字面が落ち着かずその場凌ぎで未解決の対応感がある。「がい」には何ら意味を込められない。常用漢字に「碍」が復活したら、「発達障碍」の表記が広まるだろう(もっとも「(神経)発達症」という言い換えが一般的になるかもしれない)。やがては「障碍」は、当事者にラベル付けするものではなく、発達多様性のある人に差し障りをもたらす環境側の要因だと捉えて、必要な環境改善を図りながら、言葉の使用には差し障りを感じなくなるように、含意に対する社会の認識が変化するのが理想である。 [本書「まえがき」より]

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